あなたは今日も綺麗。
あなたは今日も華麗。
あなたは今日も美しい。
今日はとっておきの宝貝(カメラ)を用意したの。
さぁ、あなたはこれから何をする?
私が貴方をばっちりキャッチv
ちゃんと振り向いてよ?
そうしないと貴方の顔が撮れないわ。
そこっ、邪魔!
ねぇ、聞いてる?
私のいとしの楊ゼン様。
それはいつもと変わらない、朝の日課。
いつ置いているのか判らないが多分毎日同じ時間に置かれる花柄の封筒を拾う。
丁寧に封筒を開けて封筒と同じ柄の紙を取り出す。
手紙に書いてある最初の行はいつも同じ。
『捧げる恋の詩』
殺風景な崑崙の一角でも貴方の美しさが損なわれることはない。
風になびく艶やかな髪は海や空をそのまま糸にしてしまったような青。
崑崙一と云われる整ったお顔。
紫の瞳を覆う長い睫。
形の良い唇。
その全てが私を魅了する。
嗚呼、願いが叶うのならば貴方を私のものに。
「のう、楊ゼン」
先程から楊ゼンと話していた太公望が至極嫌そうに顔を歪めている。
「なんですか、スース」
至極楽しそうな楊ゼンに太公望は簡単になってしまった顔でのほうに指差した。
「…あれはなんなんじゃ?」
ラブラブオーラ(?)を出しながら宝貝(カメラ)を構えているの様子はかなり怪しい。
しかも太公望は眼中になさそうだ。
楊ゼンはの方を向くと微笑んだ。
そらもぅでなくとも卒倒しそうな殺人スマイルで。
「!?」
くらっ。
卒倒しそうになったはそれでもなんとか足に力をいれて踏ん張った。
(かっこいいいいいいいいいいいいい////////)
楊ゼンたちに背を向け近くにあった岩をべしべし叩きながら
もう片方の手はにやける口元を隠しているが隠せていない。
本人は気づいていないだろうがカメラを構えた時既に今とさして変わらぬ顔をしていた。
「ほら、顔真っ赤にして可愛いじゃないですか」
考えていることがどうであれ、らぶラブオーラを放っていたっていたっての見かけは、
“好きな男に微笑まれて頬を紅く染めちゃうような可愛らしい少女”である。
楊ゼンから見れば、だが。
太公望はが興奮しながら叩いている岩にヒビがはいる瞬間を見てしまい青ざめている。
その内砕けるんじゃ…。
太公望の心配をよそに楊ゼンは微笑しながらさらに小さく手を振った。
キャーーーーーーーー!!!!!!!!!!
失神寸前。
岩がまっぷたつに割れた。
「お主…遊んどるだろう?」
飽きれ顔というか、青ざめた太公望は自分の顎に手を沿ええる仕草をとる。
少しも経たないうちに太公望は口を開いた。
「あやつはいつからおるのだ?」
聞くのも嫌そうだ、ならば聞かなければいいのに。
「僕が気づいたのは、3ヶ月くらい前ですよ」
平然と言う楊ゼンに太公望は顔が適当に。
「家に隠しカメラ(宝貝)とか隠し撮りとか名前のない贈り物とか色々ありましたよ」
呑気そうに語っていく楊ゼン。
「寝室のカメラは流石に取りましたけど、リビングとかはそのままです」
話しながらもで遊ぶことを忘れない。
「一番多かったのは手紙ですね、毎日同じ時間に玄関の前に置いてあるんです」
「可愛らしい花柄の封筒に同じ柄の紙に詩が書いてあるんですよ」
「字も可愛いんですけど整ってて読みやすいんです」
事実を話し、しまいにゃをほめ始めた楊ゼンに太公望がとうとう怒鳴った。
「よいか!お主自分がもてるからって気にしてないようだが、それは全部ストーカー行為じゃ!!」
肩で息をして太公望は疲れ果てたようにため息。
「彼女は悪くありませんよ」
誰あいつ。(哀れな元始天孫様が一番弟子)
楊ゼン様に怒鳴ってんじゃないわよ。
嗚呼、でもちょっと困った顔の楊ゼン様も素敵。
「悪いのはあそこまで人を惹きつけてしまうこの僕の美貌ですかね」
いけしゃぁしゃぁと言ってのける楊ゼンに太公望は大声で叫ぶ気力も失ったようだ。
「それに、健気で可愛いじゃないですか」
どのへんが?と問いたかったのだがその微笑に嘘がないことを見て
太公望は自分のしようとしたことがどれほど馬鹿らしいか悟ってやめた。
「…お主、あやつのこと知っておるのだろう?」
急に真面目になった顔で楊ゼンを少し睨む。
それになんら動じた様子もなく楊ゼンはサラリと言い返した。
「さぁ?」
口元に不敵な笑みを残して。
あぁあぁぁぁ!!
素敵過ぎます!!
不敵な笑みも素敵です〜〜!!
独りヒートアップ中ののほうが太公望より幸せかもしれない。
太公望は諦めたようなため息をつくと反対方向に振り返る。
「わしはもう知らん、帰る」
太公望がテコテコと去ってしまおうとしたその時。
「…でも僕は追われるより、追いたい性分でして」
楊ゼンの言葉を聞かなかったことにして太公望はそのまま振り返ることなく
四不像の待つ桃の木の下に向かう。
太公望が見えなくなると
楊ゼンはの方へ歩き出した。
楊ゼン様がこっちに来られるわ。
隠れなきゃ!
既にもろバレにも関わらず隠れなきゃというのはこんな女でも後ろめたい気持ちがあるのだろうか。
が慌ててどこかに行こう(隠れよう)としたとき楊ゼンが声をかけた。
「ちょっと待って!!」
「私、ですか?」
は首をかしげて拳を作り自分の胸に人差し指を添える。
「そう、君!!」
きゃぁあああああああ、近いわ距離が近いわ、しかも生だわ生。
カメラでは毎日何度もみているけれど、近くにいると匂いとか声とか直に感じられて。
うっとりと興奮しつつしかしそれを顔に出さないように(でてる)して平静を装う。
「何でしょうか?」
「君…名前は?」
見かけたことはあっても実は名前を知らなかったり。
彼女が有名なわけじゃないのでたいしたことは調べられなかった。
「あっ…です」
楊ゼンに見とれていたせいで返事が少し遅れる。
の口から漏れた吐息のような声が楊ゼンの耳朶をくすぐった。
もちろん当のにそんな気はないのだが。
頬を真っ赤に紅潮させて黒い瞳は潤んでいる。
「君でしょう?僕をずっと見ていたのは」
他人が聞いたらどんな自惚れ野郎だと罵りたくなるような台詞だが
楊ゼンには合っていた。
まるで、初めて会った相手に前世の繋がりを囁くような。
楊ゼンはの熱を帯びた頬に触れた。
ビクっとの身体が反応する。
は驚いたが楊ゼンの冷たい手が熱くなった頬に気持ち良いのを感じる。
「もっと…近くに来ませんか?」
囁くように紡がれる言葉。
もう片方の手もの頬に触れ視線を合わすように少ししゃがむ。
嫌ですか?と首を傾げて揺れる髪。
額が触れるか触れないかの距離で視線を交わす。
「でも、私は、貴方の部屋にカメラを仕掛けたり、勝手に写真を取ったり
毎日手紙贈ったり、名無しで花束とか…寝てるときに部屋に忍び込んだり」
しかしそれは彼女なりの愛情表現だったりするのだがそれでも度が過ぎていることを自覚している。
それなのに楊ゼンの眼から視線がはずせない。
吸い込まれてしまいそうな紫の瞳。
覚悟を決めて全部はいてしまおう。
この眼の前では嘘や誤魔化しはできない気がする。
「留守中に合鍵作ったり、楊ゼン様の等身大抱き枕作って毎晩抱いて寝てるし、
部屋の中は楊ゼン様の写真(隠し撮り)とポスターだらけだし…」
話し出すと楊ゼンも知らなかったことが次から次へと。
話すたびに吐き出される息が頬をくすぐる。
止みそうにないの言葉をさえぎるようにひきりなしに動くそれに自らの唇を添えた。
あまりにもの反応が初々しいので触れるだけでやめる。
「償いがしたいのなら、これからゆっくりとしてくれればいいですよ」
とりあえず、今晩僕の部屋に。
今後、どんな方法でが償わされるのか。
それは楊ゼンのみぞ知る。
「あれーご主人どうしたっすか?」
やつれてるっすよ。
きかんでくれ。
ふぃん。
ばっく。
りーむの言い訳
「ストーカー」
〔隠れて忍び寄る意〕しつこくつきまとってくる人。執拗に追いかけ回す人。(国語辞典引用)
だって。(何
中途半端な落ちですが、異物なんで許せ。
まだ裏はないんだけどつくるんだったら変態楊ゼンを…(書かないけど)
ストーカーは屍さんがいいかな。